Photo by Anytime Woman
『あの頃を忘れない』
「帰ったら朝までに卒論を仕上げなきゃいけないの」
そう云って君は少し千鳥足で
僕に肩を寄せて来た
飲み屋街から君のアパートまでの
5キロあまりの距離を
何度も何度もキスをしながら歩いた
あの頃のことを今でも
君は憶えているだろうか
あれはちょうど今年と同じように
雪の少ない年の冬だったね
卒業を間近に控えた君は
自分よりとても大人に見えて眩しかった
父親になった今でも
僕はあの日の夜のことを
ずっと忘れたことはなかったよ
今まで生きて来た中で
一番ロマンティックに輝いていた
あの夜のことを・・・
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