陸上競技場には神様が住んでいるのかもしれない?
ホームストレートの最後の100mを先頭で駆け抜けるとき、その神に一瞬近づけたような気がする。
それはロードレースや駅伝では感じることのできない不思議な感覚だ。
欧米では800mまでをダッシュ。それ以上の距離をランと表現する。
一方、日本では400mまでを短距離。800mから3000mまでを中距離。5000m以上を長距離と呼ぶことが一般的だ。
俺が好んだのはおよそ3000mだった。ただし3000mは中学生までは正式種目にあるが、高校生以上では女子のみ正式種目となる。
そんなわけで、俺は主に1500mと3000m障害。そして5000mを専門とした。
時にはスピード練習の一環として800mを走ったり、駅伝シーズンが近くなると10000mを走ることもあった。
勝てたレースと敗れたレースの大きな違いは、どれだけ自分に余力が残っているかということだ。
勝てたレースの場合は、不思議とレースの一部始終を鮮明に憶えているのに対して、敗れたレースの場合、その展開を憶えていることは殆どない。
無人のゴールをトップで駆け抜けるということは、単に表彰台の一番上に上がれるかどうかではなく、言葉では言い尽くせない特別な意味が含まれている気がする。
とりわけ俺が一番好きだった1500mは、400mトラックを3周と4分の3走る。
そして、わずか4分足らずで、その答えは出る。
真夏の長く伸びる影が、自分よりも一瞬先に無人のゴールを駆け抜けるとき・・・。