『もっと野菜を食べなきゃダメよ』
「もっと野菜を食べなきゃダメよ」
好き嫌いの多い僕をまるで子供を叱るように
優しくたしなめる君がたまらなく愛しかった
君は日々の忙しい生活に戻って
もう僕のことなんて心の隅っこの方に
押し込んでしまっているのだろうね
あの日家を飛び出した君を
この腕に抱きしめた時
ふたりが満たされなかった過去を
すべて取り戻せると思ったんだ
「もっと野菜を食べなきゃダメよ」
そんな小言のような会話にも
ささやかな幸せを感じていた
ふたりで暮らす毎日を
あの日僕はぼんやりと夢見ていた
あれは確か夏の始まりの
雨上がりの朝だったね・・・
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